俳優シン・ソンロク（38）が、今回「タイムクロッシング」素材に挑戦した。ジャンル物への出演を望んでいた彼が、初めてジャンル物の主役を演じたのだ。

シン・ソンロクはMBC 月火ドラマ『カイロス～運命を変える1分～』（以下、カイロス）で、最側近である妻と同僚から同時に裏切られ、父親の死の背後に会社の会長が絡んでいるという事実を一足遅れて知る人物キム・ソジンを熱演した。彼の悲しみが『カイロス』で時間を行き来し、絶え間ない疾走を見せた。

『カイロス』は、誘拐された幼い娘を救わなければならない未来の男性キム・ソジン（シン・ソンロク）と、行方不明になった母親クァク・ソンジャ（ファン・ジョンミン）を救わなければならない過去の女性ハン・エリ（イ・セヨン）が、愛する人のために時間を突っ切って奮闘するタイム・クロッシングスリラー。劇的な展開と俳優陣の熱演で「ウェルメイド」という好評を博し、12月に放送を終了した。

シン・ソンロクはドラマの中で、ユジュン建設の取締役キム・ソジン役を演じた。キム・ソジンは成功した人生を生きると思っていたが、娘が誘拐されて危機に瀕する。彼は過去の世界のハン・エリと「タイムクロッシング」で繋がり、誘拐犯を追跡した結果、妻であるバイオリニストのカン・ヒョンチェ（ナム・ギュリ）が同じ会社の課長ソ・ドギュン（アン・ボヒョン）と不倫関係にあり、自作自演を演じていた事実を知る。キム・ソジンはユジュン建設の不正を暴く活躍をした。

―『カイロス』を終えた感想を聞かせてください。

「約6ヶ月間撮影をしました。スタッフの方々や俳優陣と仲良くなり、情が湧いたので別れるのがとても残念に感じました。個人的には、多くのことを成し遂げた作品なので『カイロス』を手放すことに対してある意味少し悲しさがある、そんな作品です」

―キム・ソジン役を通じて成功と挫折の両面を同時に表現しなければいけませんでした。

「全体的な部分は台本に記載されている情報をベースにしました。僕は演技をする時、共感できる部分が重要なので、僕を基準にキャラクターを作っていくタイプです。現在のソジンの位置、経験してきたこと、今起こっていること、すべてを考慮して分析しました。今回の作品は、そのような部分において情報がとても多かったので人物を分析しやすかったです。他の作品では情報が足りないため、任意で僕が想像しながら分析しなければならない場合がありました。しかし、今回のキャラクターはとても大きな出来事を経験する人物なので、起源や情報があふれており、大きく考える必要がないくらい親切に情報が与えられた、台本の恩恵を受けた作品です」

―パク・スンウ監督、チョ・ドンインさん、イム・チョルヒョンさんと共演された感想はいかがですか？

「パク・スンウ監督じゃなかったら、この作品はこんなにも良い評価を受けられなかったと思います。他の監督の作品もたくさん目にしてきましたが、監督のユニークな想像力にはとても驚かされました。また、議論の余地を与える曖昧な質問を投げかけるのではなく、確信を与えてくれるディレクションをくださいました。最高の演出家だと思うので、より良い評価を受けてほしいですし、ドラマファンの方々が好む演出監督になると思います。一緒にドラマを制作できて幸せでした。

チョ・ドンインさんも今回初めて会いましたが、恥ずかしがり屋な方でした。今後も機会があれば、より多くのことを見せてくれると思います。あふれる才能にとても驚きました。イム・チョルヒョン先輩は僕と息が合って、現場でよく一緒にいたのでコンディションを尋ねてくれるなどの配慮をしてくださいました。演技力も素晴らしい先輩ですが、特にたくさんの刑事がいる中でいつも一緒にいて、リーダーとして率いる姿を見せてくださいました。チームワーク的にも気を使われる姿に大きな感動を受けました」
 

―最も記憶に残っている名場面、セリフは何ですか？

「名場面は正直言うと、毎回のエンディングがすべて名場面だと思うくらい楽しみなエンディングが多かったです。その中でも7話で、ダビンが人形の中にあるGPSを追跡していくと、そこに妻と娘が死んだのではなく元気に生きており、その次にソ・ドギュン課長と一緒にいたのを見て表情が徐々に変化するその瞬間、そして後ろからテッキュに襲われて気絶するエンディング。そのシーンはソジンの立場では苦難の終わりだったのではないかと思います。だから、僕はそのシーンが名場面のような気がします。セリフはたくさんあったので、一部だけを名セリフに選ぶのは難しいです」

―撮影中、視聴者が知らなかったエピソードがあるとしたら何ですか？

「イ・セヨンさんが女性主人公ですが、ドラマの状況上、通話だけで撮影していたので中盤まで会えませんでした。内容上、緊迫感があり、残念な状況を電話だけで表現しなければらなくて、僕も初めて経験した部分だったのでこれもまたエピソードではないかと思います」

―『カイロス』はシン・ソンロクさんにとってどのような作品ですか？

「実はこの作品を選ぶ前に、台本を見た瞬間“この作品は絶対に出演しなければいけない。やりたい”と、俳優生活で一度はこういうキャラクターを演じてみたいと感じました。ジャンル物を一度経験してみたいと思っていた時に出会った作品なので、より一層愛着が湧いているみたいです。そして、僕が演じたキム・ソジンという人物、断片的なとある人物の感情を表現する以外にも、ドラマの中のさまざまな状況、その次に過去と未来、そのような部分を表現するために非常に多様な要素を考えながら立体的なキャラクターとして描き出すことができた機会でした。このようなキャラクターに接することは珍しいことなので、本当に僕の人生作として残るのではないかと思います。今後、僕の心により響く作品に出会うかもしれませんが、今は僕の心に最も響く作品としてカイロスが残っています」