ニュース コラム グッズ 来日情報 お問合せ

全コーナー一覧

サイトマップ

▼検索したいコーナーをお選びください。

STAR INTERVIEW

“ここまでにしよう”女優引退考えたというキム・ヘス「本当に仕事がしたくなかった」

(全1ページ)
“ここまでにしよう”女優引退考えたというキム・ヘス「本当に仕事がしたくなかった」

キム・ヘスはスターだった。16歳でデビューしてからつねに。セクシーという言葉は陰湿だと、タブーだった時代に、セクシーを健康的な(意味の)韓国語に定着させたスター。だからだろうか、女優という言葉よりスターと言う言葉がいつも前に付いた。

キム・ヘス自身も女優という言葉が少なからず負担だったようだ。彼女は演じる時に一度も楽しいと感じたことはないと語る。疲弊していくようで、いい人になればいい女優になれるかと思い、いい人になろうとしたと打ち明ける。

相変わらず女優という言葉が負担な様子の彼女だが、正真正銘の女優だ。人生で、演技で、いい女優であることを見せている。11月12日に公開する映画『私が死んだ日』(監督パク・ジワン)は、そんな女優キム・ヘスを余すところなく見せてくれる。

『私が死んだ日』は、重要な事件の証人の少女が絶壁に1枚の遺書を残して消えた後、その事件を自殺として終結するために調査していた刑事が事実を掘り起こし、巻き起こるストーリーを描いた映画だ。キム・ヘスは、夫の浮気で離婚せねばならない状況が自分のせいなのかと自責の念に駆られている刑事、ヒョンスを演じた。

キャラクター性の強い役柄を主に演じてきたキム・ヘス。『私が死んだ日』では、これまでのキャラクターを消し、ヒョンスになった。

Q:『私が死んだ日』に出演された理由を教えてください。

「『国家が破産する日』の撮影を終えてシナリオを読みました。元々撮影中には全く他のシナリオは読みません。全ての撮影が終わったら、一日は寝て、その次の日から読み始めます。丁度『私が死んだ日』は、提案を受けていたシナリオの中で一番上にありました。題名を見て直ぐに心が惹かれました。何だろう、これは私が演じなくてはいけないと思いました。シナリオを1ページ1ページ読みながら、ヒョンスと私の状況は違うのに、なんだか私の話のように感じられたんです。どのように演じるべきかと考えながら読みました」

Q:実際、自身の経験を映画の中で表現したそうですね。

「作品を演じながら、私的な経験を敢えて話すことはありません。話す必要もありませんし。しかし、『私が死んだ日』は、全ての人物が傷と絶望、苦痛の絶頂で始まります。上手く演じようというより、本当を演じようと決心したので、その人物を表現するには本当の姿をカメラに収めなければなりませんでした」

Q:だからなのか、キム・ヘスさんは今まで、キャラクター性が濃い役柄と、そういう演技を多くされてきましたが、今回は完全にヒョンスに見えました。

「久しぶりにドラマの中の人物より、キム・ヘスが見えたとの言葉を多く聞きました。演じる時は無意識のうちに私の姿を排除しようとしてきたのですが、今回はそういったものも全て捨てました。私の感情と傷を隠さずに、どのようにこの人物をリアルに演じることが出来るのか悩みました。

アイデアも多く出して、監督がそれを映画に合うと思ったら採用してくれました。例えば、元々シナリオは初めに登場する時、ヒョンスが友達のミンジョン(キム・ソニョン)と離婚について話すシーンでした。それも仕事をしなければならないので、警察の制服を洗濯するシーンでしたが、撮影をしてみたら、それでは感情が感じられなくて、映像ではセリフだけがあるのではと思いました。実際に沸き起こる感情。それで、監督に一旦撮影をして、後で編集する時に必要なら入れようと言ったシーンが映画の最初の方にそのまま使われています。泣いたり寝たりする顔。

ヒョンスの感情を隠喩法ではなく、直喩法で表現しようと話し合いました。ヒョンスのオフィステルでミンジョンと会話するシーンは、実際の私の経験をベースに私が書きました。元々ヒョンスが眠れないという設定でしたが、私の経験を監督に話して、それがいいとなり。眠れなくて、それでも生きて行かなくてはいけないから眠るために睡眠剤を飲み、覚めても薬のせいでここがどこなのか分からなくなり、眠ればずっと悪夢を見ます。私が死んでいる姿を私が見ている。そんな悪夢を1年程見ました。実際の夢はある程度、外で私が死にました。死んでいる私を私が見ているのに、誰も知らないのか片付けないのか、ちょっと片付けてよと夢で思いました。そんな夢を見て覚めて、また寝ると夢を見る。たぶん、その時私は心理的に死んだ状態だったと思います。

この作品を撮影するのにミンジョン役を演じたキム・ソニョンさんがとても良かったです。演技と真実の間の境界にいる感じだと言いますか。本当の友達になっていました」

Q:人間キム・ヘスは、その悪夢をどのように克服されたのですか?『私が死んだ日』のヒョンスのように、仕事の忙しさで忘れようとしましたか?

「ヒョンスとは逆でした。マスコミに知られたのは昨年でしたが、その事実自体は2012年のことでした。その頃『泥棒たち』の広報をしていた時期です。本当に仕事ができる精神状態ではなかったです。『私が死んだ日』のヒョンスの台詞に『本当にわからなかった』というのがあります。本当に私が言った言葉なんです。姉が当時、私に『本当にわからなかったの?』と言ってきて、『本当にわからなかった』と答えたんです。なので映画の中でその台詞を言う時の私の顔をよく見たら、鳥肌が立ちましたね。

当時は本当に仕事がしたくなかったし、できる状態ではなかったです。この仕事をしたせいでおきた問題だったと思います。『ハン・ゴンジュ 17歳の涙』に『私は何も間違ったことはしていないのに』というセリフがあります。それと『私が死んだ日』には『知らないのは罪です』というセリフがあります。その2つが心にずっと共存していた状態でした。

私は仕事をしないし、できない、というのが正直な思いでした。『私が死んだ日』でヒョンスの横にミンジョンがいたように、今の所属事務所の代表が私の横にいてくれました。3年だけ、死んだと思ってただ私たちを信じてみてもらえませんか?と言われました。女優として過ごしてきた時間に、こんな形で終わりを迎えたくもなかったですし。それで、その状態で出演したのは『オフィスの女王』、『観相師-かんそうし-』でした。仕事をしているときはそこに没頭するので、負の感情を忘れていられました。結果としては、私もヒョンスのように友人がいて、いるだけで助かりましたし、仕事が突破口となりました」

“ここまでにしよう”女優引退考えたというキム・ヘス「本当に仕事がしたくなかった」

Q:そうした経験からヒョンスという人物ができたんですね。

「若い頃は、同い年の子に比べて未熟な部分が多かったです。若い頃から仕事を始めたので、同い年の子が経験していることをできなかったりして、それがコンプレックスでもありました。でも大人にあこがれていて、知ったふりをしていました。すごく未熟でしたね。

女優として、自分を出すということが課題でもありました。今も同じです。演技のうまい下手もありますが、キャラクターを武器に、カメラの前でどれだけ正直になれるかがその人物をよく表現する方法だと思っています。『私が死んだ日』は私を正直に表現できたキャラクターだったので、結果的にそうなったんだと思います」

Q:今作でスンチョン宅役を務めたイ・ジョンウンさんとは初共演ですが、年齢はジョンウンさんが一つ上ですね。いかがでしたか?

「友達になりました。イ・ジョンウンさんは正気私よりも大人です。演技が上手い人はみんな私より大人だと思います。イ・ジョンウンさんは私にとって蜃気楼のような方です。演技のうまい、そういうところを尊敬します。彼女に会うことができ、友達になれたこの映画では、本当に得る物が多くありました」

Q:後輩らからロールモデルとされることが多いですよね。負担はありますか?

「私はそういったことに負担を感じない性格なんです。まだまだ幼いんでしょうね。責任感や負担による、もっとしっかりやらなくちゃ、ということは全くないですね」

“ここまでにしよう”女優引退考えたというキム・ヘス「本当に仕事がしたくなかった」

Q:撮影現場で楽しかったことはありますか?

「女優として、女優になってよかったという瞬間は一度もないです。撮影現場で楽しさを感じたことが一度もないんです。現場が大変、ということではないんです。女優という職業が特別な職業ではありますが、やるたびに疲弊していくような気持になるときがあるんです。いつまでできるだろう、と思う時も多いです。自分のことは好きですが、演じているときの自分は嫌いなんです。演技をすると、必ず私のダメな部分と限界にぶち当たるので。

なのでここまでにして、引退しようと思ったこともあります。“そうだよ、自分の持っている以上のことをやったよ”と思ったり」

Q:『私が死んだ日』も女性監督で、最近女性監督の作品が増えていますよね。

「2年前だったか、私がオファーを受けた台本の中で、60%くらい女性新人監督の作品でした。その中では『私が死んだ日』に出演するためやらなかったですが、心の動く台本が2つあって。“どうしたんだろう。変化が生じているのかな”と思いました。

男性の監督が男性のキャラクターをうまく活かせるように、女性の監督が主体であれば、女性キャラクターをさらに活かすことができるので。

男女問わず、賢い映画監督がもっと出てきてほしいなと思います。映画監督と言うのは、映画をどれだけ愛しているかということでできてしまう職業ではないです。覚悟以上のものを準備しても、現場ではまったく役に立たないことも多いです。映画監督はそれに責任を持って指揮するべき人なので、うまくやる、ということではなく、しっかりできることが重要です。もっと言えば、映画監督自身がしっかりしていなければ、周りの人が機会を失うことにもつながります。そういう圧迫感と責任感を感じなくてはいけない立場です。男女問わず、そういった監督がさらに増えてほしいですね」

(c)STARNEWS
(1/1ページ)
≪前へ
次へ≫