俳優リュ・スヨンが“悪人”の仮面を装着した。

MBC『悲しいとき愛する』では、女優パク・ハンビョルと夫の“スンリゲート”事件の影響で困惑した状況だったにも関わらず、視聴率10％台を守り続け、作品面で肯定的な反応を得ることができたのは、リュ・スヨンの役割が大きかった。

『悲しいとき愛する』は、恋愛に失敗した人々の2回目の恋愛模様を見せ、心に秘めた欲望を持った人たちの、追って追われるスリル溢れる関係を描いた、激情メロドラマ。4月27日に放送された40話は、10.8％の視聴率で終了した。

リュ・スヨンは劇中、財閥家の後継者である、コンハ建設の社長カン・イヌクに扮し、完璧な外見の裏に、妻ユン・マリ（パク・ハンビョル）に執着する姿を見せた。“愛”という美名のもと、ユン・マリにソ・ジョンウォン（チ・ヒョヌ）との関係を疑い、DVを行っていたカン・イヌクは、最後警察に逮捕される寸前、自ら命を絶った。

リュ・スヨンが見せた“執着”キャラクターは、『悲しいとき愛する』へ視聴者をのめり込ませる大きな役割を果たした。彼が悪行を犯すほど、極限の愛で“愛”を探すというドラマの意味も強烈にさせた。カン・イヌクという悪党は、最終的に銃で撃たれ命を終える。

―今回の作品で、最もダークな面を見せてくださいましたね。

「撮影は、悲しく、憂鬱でした。ずっと声を荒げていて、“このドラマは『ジョーズ』で、僕はジョーズ役を任されたんだ”と思って演じていましたね。最後まで状況を緊迫させる義務を担って演じました。それでも撮影は面白かったです」

―出演作の中で、刺激的な姿で悪役を演じられたのは初めてではないですか？

「誰かの見ている前で叩くまでするのは初めてでした。カン・イヌクの、悔やむことなく自分を正当化する姿から、人間の本性を知ることができ、オーストリア出身の精神科医、心理学者のアルフレッド・アドラーが、自分の劣等感を悔やむ過程について語ったことを理解しました。カン・イヌクが劣等感にさいなまれ、人間である事を諦め否認し、戦い、我を張る姿から、人間の生き様をそのまま見せたような感じがしました。

後半で一番悩んだのは、暴力は美化されてはいけないというところです。でも、キャラクターに愛着が湧いて、演じながら合理化させようともしましたし、哀れみの感情も湧きました。チョン・ウソン先輩が『演技は世の中を写す鏡』とおっしゃっていましたが、いざとなると表現しづらいなと思いました」

―暴力的な人物を演じ、後遺症もあったのではないかと思いますがいかがですか？

「正直、今でも悪夢を見ることがあります。起きると、枕が濡れているくらいです。ドラマや映画のように飛び起きる事もありますし、次期作をやりながら忘れていくしかないようです」