ソル・ギョング インタビュー
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(以下ネタバレ含む)
「演技を甘く見ていた時期がありました」
俳優ソル・ギョングはこう話した。記者が質問したことではなかったが、自ら吐き出した驚きの告白だった。スランプともとれるその時期を乗り越えたからこそ、言えることでもあったのだろう。
カンヌ国際映画祭ミッドナイトスクリーンへ招待され注目を集めた『不汗党:悪いやつらの世の中』(以下、不汗党)以降、彼を取り巻く雰囲気は変わっていった。『不汗党』では、世の中怖いものなしの男性(イム・シワン)が内に秘めた、繊細で不安定な内面を引き出すという役を演じた彼。その彼が、まるでアイドルを連想させるかのような熱烈なファンの声援を受けている。
彼に戸惑いを持たせるほどのファンに公開される新作『殺人者の記憶法』は、『不汗党』の前に撮影していた作品で、キム・ヨンハ作家のベストセラー作品が原作。ソル・ギョングは認知症となったサイコパス殺人鬼を演じた。役のために減量し、髪を伸ばし、どこかおかしな服を着て、イメージしたままの人物に殺意など感情を加えていった。見た目に憔悴しきった彼の姿には「ファンが受ける衝撃は計り知れないな」と冗談を言われるほどだった。それは、まさしく賞賛の声であろう。老人の変装をせずとも完全なまでに近づき、強く入り込んだ姿には恐怖さえ感じられる。
「僕の心境の変化はここからだったように思います」
50歳。人生の半分を俳優として生きてきた彼の、淡々としながらも強い信念だ。
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