モデルのようなスタイルに、白玉のような肌、赤い唇…俳優イ・ジョンソクは“青春漫画から飛び出してきた”というにふさわしい俳優。昨年、ファンタジードラマ『W -君と僕の世界-』では、文字通り漫画から飛び出してきた主人公として、違和感なく演じあげた。

イ・ジョンソクのその美しい外見は、自身だけの武器であると同時に足かせでもあるように見える。

「僕のこの見た目で煙草を吸って威張っていたら、おかしいと思われる方もきっといますよね」と、自身にはない“男らしさ”に対する欲を見せた。

パク・フンジョン監督の犯罪映画『VIP』は、イ・ジョンソクが探している答えともとれる。彼は、アメリカと韓国の情報機関の企画基準で韓国へ来た、北朝鮮最高位層の子弟でありながら、極悪非道な殺人を働くサイコパス、キム・グァンイル役を演じた。彼の初ノワール（※）映画であり、初の悪役。

イケメン青年の澄んだ微笑みに、放漫さと図々しさ、残酷性と狂気を持つキム・グァンイルは、イ・ジョンソクの青春漫画的ビジュアルを武器として使用したギャップの魅力を持つ悪役だ。公開前にインタビューに応じてくれた彼は「今までやったことのないものだったので心配しましたが、80点はあげられそうです」と満足感を抱いていた。そこに演技として認められたいという願いも重ねた。

※虚無的・悲観的・退廃的な指向性を持つ犯罪映画を指す。