作品ガイド

“金の匙”という言葉をご存じだろうか。「銀の匙をくわえて生まれた（裕福な家庭に生まれる）」という英語の慣用句を受けて作られたこの言葉。スプーンの素材が貧富の差を示しており、財閥一族は「ダイヤモンドの匙」や「金の匙」、平均的な家庭は「ステンレスの匙」、貧困家庭は「土の匙」などと表す「スプーン（匙）階級論」が2015年に話題となって以来、この流行語が廃れる様子はない。まるで、この社会では人は生まれながらにランク付けされていることを裏付けるように。

貧富の格差が広がる現代の韓国社会。至るところに金の匙・銀の匙たちが作り上げた鉄壁がそびえたっている。汗を流して努力する者がその高く頑丈な壁を乗り越えることは、不可能だ。

人々は何が正義か分かっている。だが同時に、正義が決して味方ではないことも分かっている。大人は子どもに正義を教える代わりに、制度の中で順応し出世することを教える。隣り合わせ同士で競争しながら、確実な勝ちを望み、奪い合う。

このドラマは、そんな下層の“泥棒野郎”が、不敗の“泥棒様”に致命傷を負わせる痛快ストーリーだ。この対立構図の中で繰り広げられる紆余曲折の果てに、今日我々が生きるこの無秩序の原因は何なのか、すべての人の心に大きく刻み込む。

チャン・パンス（アン・ギルガン）、56歳。持ち前の手先の器用さを生かし、鍵、印鑑、名札等の製作で生計を立てている。だが、彼の隠し持つ本当の技術…それは、金庫破りだ。

「父さん、野原はこんなに広いのに、どうしてうちには土地がないの？どうしてうちは、貧しいの？」

息子の純粋な問いに答えられず、表情を曇らせるパンス。息子にはどうか真っすぐ、大きく育ってほしい。だが、この貧困の前ではそんな思いも虚しい。

遂には、息子までが盗みをしていることを知る…。

チャン・グァン

キム・ジョンテ

シン・ウンジョン

イ・ジョンウン

ソン・ジヌ